国内予選観戦記

ええと、二ヵ月半ぶりでしょうか。
なぜこんなに日が開いてしまったのかというと、
ひとえに、ここに新しい文章を載せる前に
書いてしまっておきたかった文章があったからなのですが、
そっちが一向に終わらぬ間に国内予選が来てしまいました。
相変わらず自分の筆不精にはほとほとウンザリさせられるところです。


今年は私は大学入学後5年が経過したのと、
世界大会に2回出たのとで
今年はもう参加資格がなくなってしまったのですが、
東京大学のMakegumiチームのコーチをやることになって、
またICPCにかかわることができました。


そういうことでいよいよ昨日の予選を迎えたのですが、
東大の中にも強いチームがいくつかあるかなと思っていたので、
こちらも緊張でどきどきでした。
去年強かったチームが一気に抜けて実績のある強者がおらず、
混戦模様になるのは目に見えていたのですが、
直前の練習会での成績を見させてもらったところ、
Makegumiはある程度難しい問題セットには
とても強そうだということがわかって、
それでいて、先々週の模擬練習会のような
大変簡単な問題セットでも学内3位だったので、
並々ならぬ期待を寄せていたわけではありますが。


そして本番です。
Makegumiは見事一位を勝ち取ってくれました。
本当にすばらしいとしか言いようがありません。
よくやった。
試合が始まってしまうとコーチにはもう何も出来ないので、
問題に集中してもらおうというせめてもの配慮から、
最初に問題を印刷したものをホッチキスでとめて配達する作業をやって、
その後は、上に予約した部屋でスクリーンに順位表を映しながら
コーチ集団でみんなで観戦していました。
見始めたときには既に速いチームは1問目を解き終わっていて、
熾烈な戦いを繰り広げていました。
私もまだまだ若いものには負けられないので、
裏で解いていたのですが、駄目ですね。
一人だから文章を読んで考えるのに時間がかかるというのと、
コードにバグが入りまくるというのとがありましたが、
それ以上に、コードを書くスピードが落ちてるように思います。
なんというのか、こういうのはやり続けないと衰えるもんでしょうか。
それに加えて、今まで私は問題文が日本語だろうと英語だろうと
自分で問題文を読んでいなかったので、気が付かなかったのですが、
読んでみて、なんて要領のつかめない文章なんだと思いました。
問題Cなど、10分ぐらい読んでも良く分かりませんでした。
もっと簡潔かつ明快な文章をお願いしたいところです。
ごてごて装飾する前にですね。


結局ABEを解いたぐらいで
もう観戦に手一杯でまったく作業が手に付かなくなってしまったので、
問題を解くのはやめて観戦に集中することにしました。
残り一時間ぐらいの時点で4問正解がいくつか出ていて、
どこも5問を正解しないままやや状況が停滞した状況でした。
kitsune-チームが有り得ないスピードで4問目を解いて
ここのコーダーは化け物かと思ったり、
Makegumiがそれにしっかり付いていっていたり、
慶応や早稲田が例年より上位につけていたり、
echizenがものすごい勢いで沈んでいたり、
大体今年の大勢は決しようとしていました。
それからしばらくはなかなか5問目が出ない状況で、
4問正解がぽつぽつと増えていくような状況の中、
残り20分ほどの時についに上位陣が動きました。
Makegumiがついに5問目を正解!
もう、私とN氏狂喜乱舞。
「Makegumiはネ申!!」
などなどがメッセンジャーに飛び交います。
やはりここは底力のあるチームだと確信しました。
そんなこんなで下の様子がどうなっているのかものすごく気になったのですが、
見に行きたい気持ちをこらえてどきどきの観戦です。
それからしばらくして会津大のclaxが5問目を正解して、
ほかは特に動きが無いまま終了。
終わって下に行くと、
とても興奮した様子のMakegumiの人たちがいました。
まだ勝ったことが信じられない、といった様子で、
勝った後の独特の感覚に酔いしれているようでした。
正直言ってその気持ちは本当に良く分かるものです。
私も始めて愛媛で勝ったとき、こんな感じだったろうか。
パスポートを取りにいかないと、
という心配ができるのも、うれしいものなのです。
それから同じく参加者とコーチの人二十人ほどで祝勝会に。
私はここ最近睡眠バランスがめちゃくちゃになっていたために
なんだか終始寝ぼけていて申し訳なかったです。
それにしてもMakegumiのみなさま、本当におめでとうございます。
そして参加したみなさま、どうもお疲れ様でした。


とりあえず、今回の問題について無責任に感想を書いてみます。
難易度はABDECFの順でおそらく異論はないでしょう。
うち4問は難しくは無い問題だと思います。
Aは簡単。Bも簡単。
Bは英語の題名からして、去年の東京大会の問題Dの続編か。
元はかなりの難問だったのが、大幅に簡単になって再登場。
Dは問題サイズの都合により簡単。
Eはパーズしてツリー作って場所を調べるのが普通か?
パーズするのは簡単ではあるのですが、
1個の時に括弧がいらないのを見落としたり、
ツリーからある位置の文字を取ってくるのを書くのが意外と大変。
100万を越えた数が100万と同義であるのが分かれば、まあ問題ないだろう。
Cは問題が難しい。
まず、どんな動きが出来るのかが良く分からない。
手数が20手までとあるのと、
動きが意外に制限される、かつ同一盤面への合流がとても多そう、
ということから総盤面数がそんなに多く無いだろうという予想は
出来なく無いと思うので、
あとは時間内に終了することを信じて
幅優先探索を書くだけだとは思うのだが、
盤面がヘクスな上に動きの記述がとても大変そう。
本当に大変そうだなぁ。
Fは題意は掴みやすいものの、解法はなかなか難しい。
本番中に適当に考えたところによると、
太陽が回る代わりに、どこか適当な場所を原点に固定すると、
円柱が原点を中心に回転して、
それのY軸への投影を求めるということになる。
その動きは当然sin関数になるので、
あとは影がくっついたり離れたりするタイミングで区間に分けて
その区間におけるの面積は凸関数をなすはずなので?
(これは完全なフィーリングによる予想です)
あとは式を微分できれば解けるんじゃないかなぁと
思っとりましたが、数学は高校に入って以来さっぱり
勉強していないので、そこまでの考察しか出来ていないです。
単純に3e-11の区間に分割して最短を求める、は時間が許さないだろうし、
適当に分解して、3文探索は局所最適解の問題があるので、
この問題は解析的に解くのが正解なんじゃないかなと思います。
どちらにせよものすごい考察が必要なのは間違いないので、
他の問題を解いている間に数学に強い人を考察に回したいところです。


今年は、去年に比べると
やや問題が難化したような印象を受けますね。
去年が簡単だったからなのか、
世界大会の傾向を反映したのか、
どちらにせよICPCのレベルが上昇しているのなら、
問題の難易度を下げる意味なんて全くありませんが、
そういう意味もあって、難化したのは予想の範疇。
難化すればMakegumiには有利になるとも思っていたので、
これもよかったところ。
下から三問目に探索が必要になって、
下三つを解く難易度もやや上昇したのかなと思いきや、
ボーダーは去年と変わらず3問になったようなので、
確実に日本のICPC層は厚くなってきたように思われます。
それが示すように上位層は混戦になって、
常連以外の大学も結構上位に入ってきました。
特に慶応と早稲田はこれほど上位に入ったのは久しぶりのことですね。
それに反比例するように私のいなくなった京都大学は8位に後退。
echizenは前評判にもかかわらず不甲斐ないとしか言いようの無い成績でした。
全体的に一ついえるのは、才能のある人が才能だけで国内トップを取れる時代は
とうの昔に終わっている、ということです。
才能のある人が努力をしてはじめて勝てるのです。
とにかく、この問題セットでは、上位チームは4問解けるのは当然なので、
しっかり5問目を解いてきたMakegumiとclaxは大変すばらしいです。
両チームとも去年から確実に実力を伸ばしていますね。
他のチームはちょっと要努力です。
もう少し5問正解チームが多くてもおかしくは無かったはずです。
特に、kitsune-チームはあれだけの時間を残しておきながら
5問目が通らなかったのはなぜなのか気になるところです。


なにはともあれ、
Makegumiのみなさん、そのほか通過したみなさん、おめでとうございます。
国内予選ははじまりに過ぎないので、
ぜひともアジア予選に向けても頑張ってください。
最下位で通過したチームも、4問正解のチームと1問しか差がありませんので、
訓練次第でいつでもひっくり返せるものだと思います。
あとはMakegumiのみなさん。
難しい問題をしっかり解ける底力があるというのは、
アジア地区予選を勝ち抜けるためには絶対に必要なことなので、
その点からもかなり期待しています。
これからも頑張って、是非とも世界大会に行ってください。
世界大会は本当に価値のあるものですので、
ぜひとも経験していただきたく思います。
(そしてわたしを、三度世界大会の地へと導いてください)


ちょっと自分が参加していないのをいいことに
好き勝手に言っていますね。
まぁ、自分の通ってきた道ですから、
考えさせられるところもいろいろとあります。
長くなりましたがこの辺で。
それでは、みなさん。横浜で会いましょう。